東京オリンピックで建設需要は変わる?
皆さんもご存知の通り、日本では2020年に東京でオリンピックが開催されることが決まっています。
日本でオリンピックが開かれるのは夏季と冬季を合わせてこれで4度目となり、大会の前後では色々な分野で大きな変化が起こることになると言われています。特に大きな影響を受けるのはやはり経済の分野で、その中でも競技場や宿泊施設の整備に直接関わる建設業界にはオリンピックを機に大きな変化が訪れると考えられます。ここでは、全体の建設需要という問題にテーマを絞って考えていきたいと思います。
建設需要は近年減り続けてきた
第二次安倍政権が誕生して以降、我が国ではわずかではありますが、建設需要が持ち直してきました。しかし、それ以前の政権においてはここ数十年の間ほぼ一貫して公共事業費は縮小されて来たのが現実です。
「コンクリートから人へ」という民主党時代のスローガンがその典型で、今もなおメディアでは公共事業悪玉論が幅を利かせています。そうした中で、2020年に東京でオリンピックが開催されることが決定し、各所で建設工事が始まっていると言う明るいニュースも見られるようになりました。
オリンピック開催前の建設需要
東京では今、オリンピックを目前にして近年稀に見る建設ラッシュが起こっています。これは所謂“オリンピック特需”と呼ばれているもので、オリンピックに関連した建設需要が空前の高まりを見せています。工事内容としては、スタジアムを始めとした競技場の他、選手やスタッフのための宿泊施設や娯楽施設、周辺の飲食店など様々で、これまで公共事業費の削減によって仕事を失っていた建設業者が再び工事を受注出来る状況になってきています。
過去数十年の間は受注額が減り続け、それに伴って売り上げが減少し、多くの技術者がリストラに追い込まれたわけですから、そうした時代と比べれば建設業者にとってはまさに雲泥の差と言うべき状況と言えるのではないでしょうか。今後、このオリンピック特需による建設需要の高まりは開催直前の調整段階を含めてしばらくは続いて行く事が予想されます。
オリンピック閉会後の建設需要
それでは、オリンピックが閉会した後の建設需要は一体どうなっていくのでしょうか?この点はおそらく、当事者である建設業者にとって最も気になる部分だと思います。
この疑問に答えるためには、日本で過去3度開かれたオリンピックを振り返ってみる必要があります。まず第1回目は1964年に開催された東京オリンピック、そして第2回目は1972年に開催された札幌オリンピック、最後は1998年に開かれた長野オリンピックです。
オリンピック後の景気
3度のオリンピックはそれぞれ、異なる経済状況の下で開催されました。東京オリンピックと札幌オリンピックは経済成長期に、そして長野オリンピックは景気後退期です。
まず、経済成長期に行われた東京・札幌のオリンピックですが、この時はオリンピック特需が建設業界の需要を高め、大会開催後も全体の経済成長が続いたという結果になっています。一方、景気後退期に行われた長野オリンピックでは、開催直前の特需こそあったものの、大会後はそれが反動になって景気の後退を後押しする形になってしまいました。
冷え込む可能性もある
日本の過去のオリンピックにおいては、経済成長期に行われた大会の後には経済成長が続き、景気後退期に行われた大会の後には更なる景気の後退が起こったという結果になりました。
現在の日本経済の状態を見てみると、客観的な数字を見ればデフレを脱却しているとは到底言えず、景気後退期から抜け出せていないのは間違いありません。そうした状況の中でオリンピックを迎えるわけですから、おそらくは大会後には再び景気の後退が続くことは十分に考えられ、オリンピック特需に支えられていた建設需要も大会後にはほぼ間違いなく縮小していくことになるはずです。「特需」はどこまで行っても「特需」という他はありません。オリンピックだけに頼らない、長期的かつ安定的な仕事を続ける事が重要です。